優しさは“支援”、甘さは“先送り”。私は後者ばかり選んでいた。
「断れない優しさ」が、現場を疲弊させていた。
価格交渉に付き合いすぎ、仕様追加も「今回だけ」と飲み込む。部下の遅延も「事情があるよね」で済ませた結果、案件は延焼し、粗利は蒸発した。
境界線を引くこともまた、相手への敬意だと気づいてから、営業は前に進み始めた。

こんな人に読んでほしい
- 顧客からの追加要望を断れず、採算が崩れがちな経営者
- 値引き・特急対応が常態化し、チームが疲弊している営業責任者
- 部下に寄り添うつもりが、なぜか成果が遠のいているリーダー
この記事で伝えたいこと
- “優しさ”と“甘さ”の線引きを営業プロセスに落とし込む視点
- 顧客・現場・経営の三者にとって誠実な合意(SLA/条件表)の作り方
- 言いにくいことを伝えるための言葉とルール設計の一歩
1. 甘さで燃えた案件、優しさで救った案件
元社長の私は、顧客の「今回だけ」に弱かった。要件追加を都度OKし、請求は据え置き。結果、現場は夜中対応、粗利はマイナス。
反省してからは、初回商談で“境界線の資料”を必ず提示した。標準範囲/有償追加/非対応を一枚で定義し、要望が出た瞬間にその表へマッピング。
会話は「断る」から「選んでもらう」へ。顧客満足は落とさず、赤字化だけ止まった。
2. 優しさの設計:言葉・仕組み・数字に落とす
寄り添い続けるには、属人的な“気持ち”ではなく、再現可能な“設計”が必要だった。私が効果を感じた3点。
- 言葉のガードレール:
・値引き依頼には「目的→代替→交換条件」で返す。
例:「導入決裁の後押しが目的ですよね。ならば初期教育の無償化で効果を出し、価格は据え置きにしましょう。その代わり今月中のご発注でお願いできますか?」 - 仕組みのガードレール:
・変更要求はチケット化し、影響(コスト/納期/品質)を自動見積り。
・SLA/責任分界点を契約書別紙に。緊急対応は“パック化”して値段を見える化。 - 数字のガードレール:
・案件ごとの粗利アラート閾値(例:30%割れたら役員承認)。
・“善意稼働”を可視化(無償時間の月次集計)。経営会議で止血判断。
3. それでも前に進む理由
本当に必要なのは「全部応える」ことではなく、「約束を守れること」だった。
断る勇気は、顧客の成功確率を上げるための優しさだと知ってから、提案は短く、決裁は早く、現場は静かになった。
自分にも同じ設計を——“無理をしない仕組み”を作った時、チームの熱量は戻ってきた。
まとめ
- 優しさ=支援の設計、甘さ=先送りの温存。まず言葉を整える
- 境界線は一枚資料(標準/有償/非対応)とSLAで“先に合意”
- 粗利アラートと善意稼働の見える化で、無理を仕組みで止める
次回予告
vol.22『“頑張る”のやめどきを決めてみた』
次回は、追うのをやめる勇気。撤退条件・値引き限度・失注の定義を決めたことで、むしろ受注率が上がった話をします。
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元社長のリアル再出発ストーリーをお届けします