「口は出さずに、数字とルールで支える。」――それが私の遅すぎた学び。
任せたつもりが、会議の最後で私が答えを言ってしまう――。
元社長の私は「品質担保」の名目で、現場の意思決定に毎回割り込んでいた。安心したのは私だけで、スピードは落ち、責任の所在は曖昧になった。介入をやめるためには、勇気ではなく“設計図”が必要だった。
この記事では、私の失敗から編み直した「不介入の設計図」を具体的に共有する。

こんな人に読んでほしい
- 「最終確認だけ」のつもりが毎回差し戻してしまう経営者・管理職
- 任せたいのに品質やリスクが不安で、会議に口を出し過ぎてしまう人
- チームの主体性とスピードを両立させる運用を作りたいリーダー
この記事で伝えたいこと
- 不介入を成立させる「数字・役割・ルール」の設計と運用
- 介入を呼び込んでしまうNGパターンと、その対策
- 失敗を資産化するふりかえり(レトロスペクティブ)の回し方
1. 失敗から作った“不介入の三点セット”
介入が止まらなかった時期、私は「社長の一言で方針が変わる」最悪の文化を作っていた。そこで、まず三点セットを明文化した。
①数字(ダッシュボード):
追う指標を3~5個に絞る。例)CVR、リードタイム、NPS、クレーム件数、粗利率。
※しきい値(アラート)を決め、割れた時のみエスカレーション。
②役割(RACI):
決める人(A)、実行する人(R)、相談される人(C)、共有される人(I)を合意。
私(社長)はC/Iに限定。Aは現場リーダーに固定。
③ルール(軽量プロセス):
「週次15分レビュー(数字→気づき→次の一手)」「しきい値割れの時だけ臨時MTG」「ロールバック手順は事前に文書化」。
この三点を看板に貼り、会議の最初に読み上げるところから始めた。
2. 介入を呼ぶNGパターンと対策
私がやらかした代表例は3つ。
NG1:KPIが多すぎる → 何を守るべきか曖昧になり、結局私が場当たりで口を出す。
対策:「守る数字3つ・伸ばす数字2つ」の計5つに固定。
NG2:例外対応をその場で決める → 例外が常態化し、毎回の“社長判定”が発生。
対策:例外は「再発防止とロールバック」をテンプレ化。判断は現場Aが行い、私は事後共有のみ。
NG3:レビューが報告会になる → 私がアドバイザーに化けて介入再開。
対策:レビューは質問のみ。「数字は何を語っている?」「仮説は?」「次の一手は?」の3問だけに絞る。
3. 不介入を支える“ふりかえり”設計
介入をやめると、失敗が見えにくくなる不安がある。そこで、レトロスペクティブ(ふりかえり)を固定化した。
フォーマットは「Keep(続ける)/Problem(問題)/Try(次の実験)」+オーナーと期限。
会議は30分、議事は1ページ。社長の私が見るのはページ数ではなく進捗の割合だけ。
これで、私は“見守る指標”に集中でき、現場は“決める責任”を取り戻した。
まとめ
- 不介入は根性論ではなく設計図――「数字・役割・ルール」の三点セット
- 会議では答えを言わない。介入は「質問」と「しきい値発火時」のみ
- 失敗はレトロスペクティブで資産化し、進捗の割合で見守る
次回予告
vol.31『仕組みが崩れた日——“例外の連続”にどう向き合ったか』
不介入の運用が一度破綻。数字が機能せず、現場も迷子に。元社長として何をやり直したのか、再設計の具体策を失敗談込みで書きます。
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