「任せた」は、責任の所在を空白にしただけだった。
「好きにやっていいよ」。その一言で、私は現場を孤立させた。
元社長の私は、権限委譲を「口出ししないこと」だと誤解していた。意思決定の範囲も、使える予算も、判断の基準も示さないまま丸投げ。失敗した時だけ介入して、信頼も成果も同時に失った。
この記事では、“任せたつもり”が招いた混乱と、権限の枠を再設計してやり直したプロセスを記録する。

こんな人に読んでほしい
- 「任せているのに成果が出ない」と悩む経営者・管理職
- 介入と放任のバランスが分からないリーダー
- 権限委譲の“枠”と“責任”を設計し直したい人
この記事で伝えたいこと
- 権限委譲が失敗する典型パターン(丸投げ/後出し介入/基準不在)
- 「枠・基準・支援」をセットで渡す再設計の要点
- 任せた後に機能するレビュー運用の作り方
1. 勘違いの権限委譲が生んだ混乱
私は「現場主導」を掲げ、プロジェクトをチームに全面委譲した。だが実際は、範囲が不明確(何を決めていいか分からない)、基準が不在(成功条件が曖昧)、支援が遅延(相談窓口がない)。
進捗が止まったところで私が“後出しジャンケン”のように介入し、方向をひっくり返す——信頼は失われ、意思決定の速度はさらに落ちた。これは委譲ではなく、責任の空白の量産だった。
2. 再設計:枠・基準・支援を同封する
丸投げをやめ、渡すものをフォーマット化した。
①枠(Scope):決めてよい領域/要相談の閾値(例:予算±10%超は相談)。
②基準(Guardrails):KPI・締切・品質基準(NG例の明記)を1ページに。
③支援(Support):週1の30分レビュー、意思決定の壁に当たったときの連絡先、使える人的・情報リソースの一覧。
文言は「許可を待たないで動ける」ように具体化した。枠があるから、自由に走れる。
3. 任せた後を機能させるレビュー運用
介入と放任の中間をつくるため、定点レビューを導入。
・フォーマット:今週やったこと/学び/来週の仮説・リスク/支援依頼の4点だけ。
・ルール:判断はチーム、例外時のみ私が承認(閾値は事前定義)。
・記録:決定ログを残し、後からの“後出し”を不可能に。
結果、相談は早まり、決定の質はチーム内で上がった。私は“口出し役”から“資源提供者”に役割を変えられた。
まとめ
- 「任せる=放置」ではない。枠・基準・支援の3点セットが必要
- 後出し介入は信頼を壊す。閾値と決定ログで防ぐ
- リーダーの仕事は口出しではなく、障害除去と資源供給
次回予告
vol.35『任せた結果がズレた日——レビュー不全と修正のリアル』
レビュー運用を整えたはずが、成果はズレた。何が漏れていたのか——基準の言語化とフィードバックの失敗談を掘り下げます。
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