vol.38『価格で殴って失った信頼——値引きの副作用と立て直し』

シリーズ①:Re:START NOTE|”止まりながら進む日々”

短期の受注に勝って、長期の信頼を失った。

「値引き」は武器じゃなく、麻酔だった。

経営が苦しい時期、私は値段で勝負した。確かに商談は前に進む。だが、進んだのは“赤字に向かう列”だった。
値引きのクセがつくと、営業は提案を磨かず、顧客は価値を問わなくなる。気付いた時には、粗利と信頼が同時に薄くなっていた。

ここからの立て直しは、「値段の会話」を「価値の会話」に戻すところから始まった。

値引きは関係を縮める近道ではなく、期待を下げる近道だった

こんな人に読んでほしい

  • 値引きが常態化し、粗利と自信を同時に失っている経営者・営業責任者
  • “価格以外”で選ばれる理由を作り直したい人
  • 短期の数字と長期のブランドのバランスで悩んでいる人

この記事で伝えたいこと

  • 値引き依存が生む“営業学習の停止”と、顧客期待の劣化
  • 価格交渉を「価値の再定義」に変える型
  • 粗利を守りながら受注率を落とさない立て直し手順

1. 値引きに頼った瞬間、何が壊れたか

受注率が落ちたとき、私はセール最終日のように「今だけ」を多用した。
すると、商談の論点が価値→価格へと崩落。提案の質より値段の話が増え、顧客も比較表の最右列(価格)しか見なくなった。
社内では「最後は値段でいける」が暗黙知となり、仮説検証・導入設計・活用設計が雑になる。学習が止まると、値段以外で勝てなくなる——最悪のループだった。

2. 付加価値を“言い切る”設計:値段の会話を価値の会話に戻す

立て直しでやったのは3つだけ。
(1) 価格の前提を固定:標準価格・割引条件・想定粗利を見える化。例外は役員承認のみ。
(2) 提案書を三層構造に業務課題 → 解決設計 → 経済効果を1枚で接続。単価の根拠を、成果ストーリーで“言い切る”。
(3) 代替案を事前に用意:値引き要望には、スコープ調整・段階導入・支払条件の3オプションで返す。
これで価格交渉のたびに“価値の再定義”が行われ、粗利がブレーキの役割を取り戻した。

3. それでも前に進む理由:粗利はブランドの守衛

値引きをやめると一時的に受注率は下がる。だが、導入後の成功率とLTVが上がる
「高いから選ばない」顧客は離れるが、「成果まで一緒に見たい」顧客が残る。
粗利は“会社の学習コスト”であり、ブランドの守衛でもある。守れた粗利が、次の改善と信頼を買い戻してくれる。

まとめ

  • 値引きは短期の麻酔、長期の学習停止
  • 価格交渉は“価値の再定義”に組み替える
  • 粗利を守ることが、顧客成功とブランドを守る

次回予告

vol.39『無料に埋もれた価値——タダ提供の落とし穴と有料化の筋道』

次回は、善意の無償対応が招いた「無限タスク化」の失敗談。無料から有料へ、関係を壊さず移行したプロセスを語ります。

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