戦略は正しく、運用は迷子——その間にいたのは私だった。
「戦略はいい。でも現場では回らない」——その一言で固まった。
数字から逆算したKPI、洗練された資料、ロジックは完璧。なのに受注は伸びず、商談は空回り。
聞こえていなかったのは、顧客の温度と、現場の息づかいだった。私は地図ばかり見て、地面を歩いていなかった。

こんな人に読んでほしい
- 戦略は整えたのに成果が出ず悩む経営者
- 現場の反発や停滞にモヤモヤしているマネジメント層
- KPI設計と運用設計のズレを感じている人
この記事で伝えたいこと
- 戦略と現場実装の間にある「翻訳作業」の重要性
- 営業プロセスにおける検証サイクル(仮説→実行→学習→修正)の設計
- 現場の一次情報を基点にした指標・会議・権限の再設計
1. 机上で勝って、現場で負けた日
私は市場分析から逆算し、業種・役職・提案切り口まで緻密に定義した。
しかし失注理由を深掘ると、「その役職は意思決定に関与していない」「提案が現場課題に刺さらない」——
つまり、紙の上では正しいが、買い手の現実とはズレていた。
現場ヒアリングを「感覚」と切り捨てた瞬間から、勝負はついていた。
2. 現場からの抵抗は、実は正しかった
新戦略の浸透会議で、メンバーはうなずくが、現場では動かない。
彼らの「この順番だとアポが取れない」「この指標だと商談が浅くなる」という違和感は、やがて離反に変わる。
私はようやく、現場の違和感は“エラー”ではなく“学習データ”だと理解した。
会議体を〈報告〉から〈検証〉へ切り替え、失注レビューを義務化。仮説の粒度を現場基準に落とした。
3. 戦略を現場で動かす「翻訳三点セット」
私がやり直したのは次の3つだけだった。
① 用語の統一:理想顧客・課題・価値訴求の定義を“現場の言葉”で1枚に集約。
② 最小プロセス:指標は3つに削減(面談数/仮説検証数/次回確約率)。
③ 週次の検証会:成功・失敗の音声メモを15分で共有→その場でスクリプト更新。
結果、戦略は資料から抜け出し、現場で回る仕組みになった。
まとめ
- 戦略は作るものではなく、現場で“育てる”もの
- 現場の違和感は、改良のための一級データ
- 指標は少なく、検証は早く、言葉は現場のままに
次回予告
vol.43『数字の“増やし方”を間違えた日——追うべき指標と捨てる勇気』
次回は、追いやすい数字に引っ張られて本質を見失った失敗と、指標の断捨離で成果が戻ったプロセスを語ります。
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