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価格は最後に決めるものではなく、最初に合意する前提だ。
「安くして」ではなく「なぜこの値か」。——視点を変えた瞬間、値引きの空気は消えた。
元社長として“払う側”の私は、数字の根拠が見えないと反射的に値引きを求めていた。提供価値・リスク・役割分担が曖昧なまま見積を出せば、どちらの立場でも消耗戦になる。
そこで導入前に必ず行ったのが「価格の前提を整える15分ミーティング」。以後は値引き交渉が激減し、意思決定が早くなった。

こんな人に読んでほしい
- 見積提出のたびに値引き前提で話が始まってしまう営業・経営者
- 「他社はもっと安い」と比較され、価値説明が後手になることが多い人
- 価格の話で消耗せず、合意をスムーズに取りたい人
この記事で伝えたいこと
- 価格は「金額」ではなく「前提条件の合意」であるという視点
- 15分で整えるべき4つの前提(目的・守備範囲・成功条件・リスク)
- 明日から使えるアジェンダと一言テンプレ
1. 価格の誤解と、15分ミーティングで変わったこと
社長時代、最も疲れるのは「とりあえず安くして」で始まる打ち合わせだった。
後から学んだのは、“価格に含む/含まない”を先に決めるだけで値引き要求は減るということ。
私が営業側に回ったときは、見積の前にこの15分だけを必ずセットした。
アジェンダ(3分×5項目)
1) 目的の一文化(何を“守る/伸ばす”ための投資か)
2) 守備範囲(どこまで含む?どこから先は別費?)
3) 成功条件(KPI/期限/想定インプット)
4) リスクと免責(依存要素と対応方針)
5) 価格構造(固定費/変動費/成果連動の比率)
これを合意してから見積を出すと、「高い/安い」の議論が「含む/含まない」の合意確認に置き換わる。
2. 比べないことが教えてくれたもの
比較表で勝ち切ろうとすると、話題はすぐ単価へ流れる。元社長の私が“納得して支払えた”のは、自社の事情に合わせて前提を一緒に作り直してくれた提案だけだった。
だから営業側の私は、他社比較の前に以下を提示する:
- 価格の分解図:人件・ツール・移行・運用・リスクバッファ
- 削るなら何が減るか:納期/品質/サポートのどれを引くのかを明示
- 伸ばすなら何が増えるか:成果連動や拡張での“上振れ”の描写
「単価で比べる」のをやめ、「前提で合わせる」に切り替える。ここで合意できると、値引きはほぼ議題から消える。
3. それでも前に進む理由(当日の台本つき)
実際に使ってきた開きの一言はシンプルだ。
冒頭30秒:
「本日は“価格の前提”だけを整えさせてください。
含む/含まない、成功条件、リスク、価格構造の5点を合意できたら、見積はその後に出します。」
クロージング60秒:
「今日の合意に沿って2パターン作ります。
A:最短で効果を出す標準案/B:コスト最小の分割案。
どちらも“削る/伸ばす”の影響を明記します。」
——この締めで、単価の押し引きから、設計の意思決定に会話が移る。
まとめ
- 値引きは“前提のズレ”の症状。まずは前提を15分で合わせる
- 目的・守備範囲・成功条件・リスク・価格構造の5点を合意
- 比較ではなく設計の意思決定へ。見積は“前提の結果”として提示
次回予告
vol.60『決裁が遅い会議——“15分アジェンダ”で動き出した日』
次回は、会議が長いのに決まらない問題をどう解消したか。元社長の実体験から、15分で決裁に近づく進め方を共有します。
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