vol.141『“弱音の出しどころ”——一人で抱え込まないための相談術』

シリーズ①:Re:START NOTE|”止まりながら進む日々”

⏱ 読了目安:約3分

「弱音を吐ける場所」の数が、そのまま再スタートの持久力になる。

一番苦しかったのは、お金でも時間でもなく、「このしんどさを誰にも言えない」と感じていた時期だった。

元社長という肩書きは、たしかに誇らしい瞬間もくれた。でも同時に、「弱音を見せちゃいけない」「相談する側じゃなく、される側でいろ」と、自分で自分を縛る鎧にもなっていた。

会社を手放し、再スタートの道を選んでからも、その癖はなかなか抜けない。仕事の不安も、お金の心配も、将来への焦りも、どこにも出せずに一人で抱え込んでいた時期がある。

今回は、元社長としてのプライドと、一人の人間としての弱さ。その両方を抱えたまま、「誰に」「どこまで」打ち明けてきたのか——弱音の出しどころと、相談の仕方についてまとめていく。

夜のカフェで一人、ノートを前に弱音を書き出しているシーンを象徴した見出し画像

こんな人に読んでほしい

  • 再スタートの不安やしんどさを、誰にも言えず一人で抱え込んでいる人
  • 「相談したいけれど、迷惑をかけそう」「カッコ悪い」と飲み込んでしまう人
  • 自分の弱さを見せることに慣れておらず、どこに何を話していいか分からない人

この記事で伝えたいこと

  • 弱音そのものよりも、「弱音の出しどころ」を持てないことの方が危険だという視点
  • 元社長としてのプライドと、一人の人間としての弱さを両立させる相談の仕方
  • 一人で抱え込まず、再スタートを長く続けていくためのシンプルな相談術

1. 弱音を出せずに“無言のまま沈んでいた”時期

会社を手放した直後、正直、何から誰に話していいか分からなかった。
元スタッフには「申し訳なさ」が先に立ち、友人には「情けなさ」を見せたくなかった。
家族には心配をかけたくないから、なるべく明るくふるまう。

その結果、誰の前でも本音を話さないまま、日々だけが過ぎていった。
日中の仕事モードが終わった夜中、ようやく本心が出てくる。

「本当にこのままで大丈夫なのか」
「もう一度立て直す力なんて、自分に残っているのか」
「もう一回失敗したら、さすがに終わりだろうな」

でも、その弱音を誰かに伝えるイメージが湧かない。
相談する相手の顔が浮かんでも、「こんな話をしても…」と勝手にブレーキをかけてしまう。

振り返ると、あの時期が一番危なかったと思う。
状況がキツいからではなく、「どこにも出せない感情」が、自分の中で静かにたまっていったからだ。

その状態から少し抜け出せたきっかけは、「何を」「誰に」話すのかを分けて考え始めたことだった。

2. 「誰に」「どこまで」話すかを分けるだけで、心は軽くなる

弱音を出すのが怖いのは、「一度話したら全部さらけ出さなきゃいけない」と思い込んでいるからだった。
そこで途中からは、弱音を3つのレベルに分けて考えるようにした。

① レベル1:事実だけを話す相手

仕事仲間やビジネスの知人には、まず「事実レベル」だけを話す。
たとえば、
「今こんな仕事を模索している」
「こういう壁にぶつかっている」
「この分野の情報が足りていない」など。

不安や感情までは全部出さない。
その代わり、「何か知っていたら教えてください」と相談ベースで終える。
感情のケアではなく、“情報”や“視点”をもらう相手として位置づけた。

② レベル2:感情まで話せる相手

次に大切なのが、「実はけっこうしんどい」と言える相手。
昔からの友人や、信頼している同業の人がこれにあたる。

ここでは、
「正直、怖い」
「また失敗したらどうしようって思ってる」
「自分のことを信じ切れていない」など、感情の部分まで出す。

ポイントは、「解決策を求めすぎない」こと。
ただ話を聞いてもらうだけでも、頭の中のぐちゃぐちゃが「言葉」に変わる。
それだけで、心のスペースはかなり空いてくる。

③ レベル3:プロに任せるラインを決めておく

どうしても眠れない日が続く、食欲が極端に落ちる、起き上がるのもしんどい——。
そんなサインが出たら、「ここから先はプロの領域」と決めておくことも大事だと感じている。

医療や専門家への相談は、「最後の砦」ではなく、
「早めのメンテナンス」くらいの感覚で捉えていい。
元社長という立場にいたからこそ分かるが、「プロを頼る決断」が遅れたことで、かえって事態がこじれるケースを何度も見てきた。

自分自身についても、「ここまできたら外部の力を借りる」と先に決めておくことで、変な我慢をしすぎずに済むようになった。

3. それでも前に進む理由——弱音は“再スタートの燃料”にもなる

弱音を出すことに慣れていないと、「こんな話をしたら嫌われるんじゃないか」「信用を失うんじゃないか」と不安になる。
僕もずっとそう思っていた。

でも実際には、弱音を少し打ち明けたことで、
・思わぬ形で仕事につながったり
・「実は自分も同じで」と打ち明けてもらえたり
・ただ静かに話を聞いてくれる人との距離が縮まったり
そんな経験も増えていった。

弱音は、ただの「マイナスな感情」ではなく、
「本当に大事にしたいもの」や「自分が怖れているもの」を教えてくれるサインでもある。

再スタートのしんどさを一人で抱え込む必要はない。
弱音を完全になくそうとするのではなく、
「どこに」「どのレベルまで」出すかを整えていくことで、
それ自体が再スタートの燃料にもなっていく。

もし今、誰にも話せずに苦しいなら、
いきなり全部を話そうとしなくていい。
まずは、一行のメモからでもいいし、
たった一人に「最近ちょっとしんどい」と送るメッセージからでもいい。

弱音の出しどころをひとつ増やすことは、
再スタートの道に、小さな「避難場所」をつくることでもある。
その避難場所が増えるほど、人は遠くまで歩いていける——僕はそう信じている。

まとめ

  • 一番危険なのは、「弱音をどこにも出せない状態」のまま走り続けること
  • 事実だけ話す相手・感情まで話せる相手・プロに任せるラインを分けることで、相談のハードルは下がる
  • 弱音は恥ではなく、再スタートの燃料にもなる——一人で抱え込まず、出しどころを少しずつ増やしていく

次回予告

vol.142『“言葉にするリハビリ”——うまく話せない自分から抜け出す書き出し習慣』

次回は、いざ誰かに相談しようとしても、うまく言葉が出てこない時期にやっていた「一人でできる言葉のリハビリ」について書きます。元社長時代の会議用メモと、再スタート中のノート習慣をかけ合わせて生まれた、“話す前に書いて整える”書き出し習慣をまとめていきます。

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