焦りはアクセルに見えて、実はブレーキだった。
「今月だけは何としても数字を…」その一言が、現場を迷子にした。
元社長として、売上の谷で焦った私は、値引き・案件乱獲・人海戦術に手を出した。短期的には動いたが、利益は痩せ、顧客の信頼も薄れた。
何を守り、何を捨てるか――営業の優先順位を取り戻す過程を記す。

こんな人に読んでほしい
- 月末になると値引きを口にしてしまう経営者・営業責任者
- 案件は多いのに粗利が残らないと感じている人
- 短期数字と長期戦略の板挟みで意思決定に迷う人
この記事で伝えたいこと
- 「焦り」が営業現場にもたらす構造的な失敗
- 守るべきKPI(粗利・LTV・戦略適合)と捨てるべきKPI(件数至上主義)
- 優先順位を取り戻すための小さな再設計
1. 焦りが連れてきた“悪手”の連鎖
私は谷に差しかかると、受注件数を最優先に置いた。
値引きの常態化、要件合わない案件の受注、リソースの過剰投入――どれも短期の数字は作ったが、翌月の粗利と稼働を確実に蝕んだ。
既存顧客のフォローは後回しになり、解約率が微増。追う数字が増えるほど、さらに焦る悪循環だった。
2. 優先順位の再設計――“選ばない勇気”を仕組みにする
反省して、営業案件を受注確度×粗利率×戦略適合でスコア化。閾値未満は値引き禁止・受注見送りを徹底した。
月次会議は「数字追及」から「案件のやめる会議」へ。提案は“1課題・1解決・1検証指標”に絞り、工数の見える化で人海戦術を封印。
既存顧客のヘルスチェック(利用頻度・成果指標)を週次化し、アップセルよりも失点回復を先に置いた。
3. それでも前に進む理由
案件数は一時的に減ったが、粗利率と受注後の満足度は改善した。
焦りは消えない。ただ、仕組みで自分を鈍化させることで、守るべきもの(利益・信頼・人)を守れる。
経営者の仕事は、現場が迷わない“線引き”を用意することだと、やっと理解した。
まとめ
- 「件数至上主義」は焦りの産物、粗利と戦略適合を優先する
- 選ばない勇気をスコアとルールで仕組み化する
- 短期の値引きより、長期の信頼回復に投資する
次回予告
vol.17『“自分の速さ”で進めばいい』
次回は、他社や他人のペースに飲まれて崩れた営業設計を、自社のリズムに戻した実践について書きます。
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