vol.17『“自分の速さ”で進めばいい』

シリーズ①:Re:START NOTE|”止まりながら進む日々”

他社のKPIに合わせた瞬間、うちの強みは消えた。

「市場の標準」に自社の歩幅を合わせて空回りした。

元社長の私は、成長企業のベンチマークを真似し、商談回数・提案本数・新規比率を一気に引き上げた。結果、現場は追い立てられ、提案の質は薄まり、解約が先に増えた。

営業は“速さ”より“自分たちのリズム”。歩幅を取り戻すまでの失敗と修正を残す。

歩幅が揃わないと、チームは崩れる

こんな人に読んでほしい

  • 他社事例をそのままKPIに落として現場が疲弊している経営者
  • 短期指標を追うほど提案品質が落ちていると感じる営業責任者
  • 「スピードアップ」の号令で離反・解約が増え始めた組織のリーダー

この記事で伝えたいこと

  • 速さの最適値は会社ごと・商材ごとに違うという前提
  • 営業リズムを測るための“歩幅KPI”(滞留日数・提案準備時間・顧客側意思決定周期)
  • 自社の速さを取り戻すための現場主導の再設計

1. 他社速度に合わせて崩れたこと

失敗は単純だ。新規商談数を月間2倍に増やし、提案までのリードタイムを半減させた。
しかし当社はカスタマイズ比率が高く、要件定義に最低でも2回の現場ヒアリングが必要だった。ショートカットの結果、企画は汎用化し、受注後に手戻りが発生。
目先の“速さ”は作れたが、粗利は削れ、CSは疲弊、アフターの対応遅延で解約率が上がった。スピードは上がったのに、目的地から遠ざかった。

2. 自社の“歩幅KPI”を定義する

現場と再計測した。私たちに必要だったのは件数ではなく、適切な歩幅だ。
具体的には以下を月次KPIへ昇格:

  • 案件滞留日数(フェーズ別):案件が止まる“癖”を可視化し、無理な前倒しをやめる
  • 提案準備時間の中央値:最低ラインを設定し、準備時間を削る受注を禁止
  • 顧客側の意思決定周期:先方の稟議リズムに合わせ、節目ごとに仮説検証を入れる
  • アフター稼働の確保率:新規の“速さ”が既存支援を壊していないかを監視

会議体も変更。週次は「未達の詰め」ではなく、歩幅逸脱アラートの是正会議に。
提案は「1課題・1解決・1検証指標」に絞り、顧客の稟議材料フォーマットを共通化して提案回数を減らした。

3. それでも前に進む理由

案件数は落ち着いたが、受注後の手戻り率と解約率は下がった。
速く“見せる”のは簡単だ。だが、同じ歩幅で完走する方が難しく、価値がある。
経営者がやるべきは、現場が自分たちの速さを守れるように、構造で支えることだ。

まとめ

  • 他社ベンチマークの“速さ”は、その会社の設計あってこそ
  • 自社の歩幅KPI(滞留・準備・稟議周期・アフター)で逸脱を検知
  • 件数より、完走率と手戻り率を営業のコア指標に据える

次回予告

vol.18『“どこかで繋がっている”という感覚』

次回は、点で終わる商談を線に変えた“縁の設計”について。紹介・再訪・共同提案――関係が巡る仕組みづくりを語ります。

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