営業は点では終わらない、線にも面にもなる。
「あの時の名刺が、半年後の受注に化けた。」
元社長の私は、目の前の商談だけに集中しすぎて“関係の設計”を怠った。短期で成果が見えない活動を切り捨て、紹介も再訪も生まれない“点営業”を量産。結果、常に新規獲得で疲弊し、解約補填のための割引が増えた。
弱いつながりを育てる仕組みに切り替えたら、商談が勝手に循環し始めた。今日はその失敗と立て直しを記す。

こんな人に読んでほしい
- 新規開拓が毎月ゼロスタートでしんどい経営者
- 紹介が生まれず、値引きに頼りがちな営業責任者
- 展示会・セミナー後のフォローが形骸化しているチームリーダー
この記事で伝えたいこと
- 関係は“設計”できるという視点の大切さ
- 弱いつながりを育てる具体策(タグ設計・接点設計・提供価値の分割)
- 循環を生むための最初の一歩(紹介導線と再訪リチュアル)
1. 点営業に固執して失ったもの
当時の私は、月次ノルマに追われ、受注=終点の発想だった。
受注後のナレッジ共有会はカット、展示会リードは「3回架電して反応なし=死蔵」。
その結果、既存からの再訪・紹介は生まれず、広告費と値引きで売上を維持。面談件数は増えるのに、面談あたり粗利は低下。疲労だけが積み上がった。
2. “繋がり”を設計する:弱いつながりを育てる仕組み
反省して、関係を点→線→面へ広げる設計に変えた。キモは「タグ」「接点」「分割価値」だ。
- タグ設計(CRM):関心テーマ・意思決定段階・紹介元の3タグを必須化。メールも面談もタグ別に最適化し、追客の“雑音”を排除。
- 接点設計:展示会・ウェビナー・訪問後に48時間以内の1枚要約(課題/仮説/次の検証)を送付。90日後に仮説アップデート便を自動送信。
- 提供価値の分割:いきなり本提案ではなく、30分の“検証ミニパック”→2週間の“試験運用”→本契約の三段階に。合意のハードルを下げ、関係の線を途切れさせない。
- 紹介導線:納品後7日で成功要因の1枚レポートを渡し、同業2社への転用案を記載。紹介が起きた場合の特典は値引きではなく、「導入社限定の運用テンプレ」に統一。
- 再訪リチュアル:休眠90日の顧客に、「3つの失敗談+1つの無料診断」で再接続。自慢話ではなく、失敗の開示をフックにした。
指標も変更。新規獲得数より、紹介経由比率・再訪率・接点からの学習件数を主要KPIへ。数字が“繋がりの健全度”を示し始めた。
3. それでも前に進む理由
即効性はなかった。だが半年で紹介比率が上がり、値引き率は自然に低下。
弱いつながりは、ある日突然、線になる。線はやがて面になり、採用・PR・共創まで拡張する。
経営者がやるべきは、奇跡を待つことではなく、繋がりが生まれやすい“場と導線”を用意することだった。
まとめ
- 商談は点で終わらせず、タグ×接点×分割価値で“線化”する
- KPIは件数より、紹介比率・再訪率・学習件数で“繋がり”を測る
- 成功自慢より、失敗開示が再接続の最短ルート
次回予告
vol.19『言葉にしない想いも、届いているかもしれない』
次回は、言葉にならない顧客の期待をどう掬い、提案へ翻訳したか。定性の拾い方と“行間KPI”のつくり方を語ります。
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