vol.20『過去の自分に、救われることもある』

シリーズ①:Re:START NOTE|”止まりながら進む日々”

棚の奥の“失敗フォルダ”が、いちばん強い武器になった。

「あの時のメモが、今日の受注を連れてきた。」

資金繰りに追われていた頃、新規の扉は重く、提案も空回りした。そんな時に頼ったのは、過去の提案書、失注理由、クレーム対応の記録——当時は恥ずかしくて見返したくなかった“黒歴史”だった。

営業が停滞したときこそ、過去の自分を資産化する。私はその遅すぎる学びで、商談の再現性を取り戻した。

失敗記録の棚卸しが営業を助ける

こんな人に読んでほしい

  • 新規開拓が伸びず「何を直せば良いか」霧の中にいる経営者
  • 提案の質が属人化しており、再現性に悩む営業責任者
  • 失注分析が形骸化し、会議が blame で終わりがちなチームのリーダー

この記事で伝えたいこと

  • 過去資産(失敗・成功・素材)を“探しやすく・使いやすく”する視点の大切さ
  • 自分自身と向き合い、痛い記録を言語化してナレッジ化する方法
  • 明日の提案を変える最小の一歩(テンプレ化と再利用設計)

1. 倉庫のダンボールから始まった逆転

社長だった私は、新規が落ちた原因を「マーケットが悪い」で片づけた。だが、古い失注メモをめくると、
価格ではなく“導入後の不安”が一貫していた。にもかかわらず、提案書は機能比較が9割。
過去の自分が残した赤字コメント——「社内展開の段取りが見えない」「KPIの責任の所在不明」——を拾い、
リスク先回りの1枚資料を新たに冒頭へ差し込んだ。結果、次の商談で初めて「値引きなし」で前に進んだ。

2. 棚卸しの型:3つのフォルダで再現性を作る

過去資産は「記憶」ではなく「検索」できる形にする。私がやり直したのはこの3つ。

  • ①失注図鑑:案件名/業種/失注理由(顕在・潜在)/言質引用/対策案を1カードに。
    タグは「社内合意」「運用負担」「優先度競合」「キーマン不在」などに統一。
  • ②成功プレイブック:勝ち筋を“問い”で残す。「導入後の初週タスクは誰が?」など、会話の順序まで記録。
  • ③素材ライブラリ:図表・事例・FAQをスライド単位で保管。提案書は“組み立てるもの”に変える。

失敗談を晒すのは痛いが、現場は“リアルな弱点”を欲している。経営会議で私が先に自分の失敗カードを出すと、チームの投稿量が3倍になった。

3. それでも前に進む理由

過去は変えられないが、過去の自分は味方にできる。棚卸しを続けると、提案の初速が上がり、属人差が縮まる。
「今日はダメだった」が、「明日は同じミスをしない」に変わる瞬間——それが再出発の実感だった。

まとめ

  • 失注の大半は“言いにくい不安”——カード化して見える化
  • 勝ち筋は“問い”でテンプレ化、素材はスライド単位で再利用
  • 経営者がまず自分の失敗を開示すると、ナレッジは循環する

次回予告

vol.21『やさしさの使い方を、少しだけ変えてみた』

次回は、甘さと優しさの境界線。顧客・部下・自分に向ける“やさしさ”を営業設計にどう反映させたかを語ります。

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