「売上は伸びているのに、現場は痩せていく」その違和感が限界のサインだった。
数字は右肩上がり。だけど会議が終わるたび、心のどこかが冷えていった。
経営者として、私は営業の“再現性”より“その場しのぎ”を優先していた。大型案件に偏り、属人化を見て見ぬふり。現場の疲弊、離脱、商談の取りこぼし——すべてが少しずつ積もっていった。
「このやり方を続けるのは無理だ」そう腹の底で気づいた瞬間の話と、そこから見えた営業課題を記す。

こんな人に読んでほしい
- 受注はあるのに現場が疲弊し、解決策が見えない経営者・営業責任者
- 属人化から抜け出せず、標準化に踏み切れないチームリーダー
- KPIは追っているのに、商談の「質」が下がっていると感じている人
この記事で伝えたいこと
- 限界の正体は“成果とプロセスのズレ”であること
- 元社長として経験した営業課題(選定・価格・型・レビュー)の失敗
- 立て直しに効いた「小さな標準化」と「現場からの逆算」
1. 限界を自覚した3つの兆候
①勝ちパターンの不在:人によって成果がバラバラ。再現できない勝ち方は、実質の負けと同じだった。
②案件の歪み:大型・特注案件に寄り、納期も原価も読めない。粗利は出ても現場の負債が増える。
③会議の空洞化:パイプラインの数字は並ぶのに、「なぜ勝ち/負けたか」が語られない。学習が起きない。
2. 経営者の営業課題——私の失敗4選
(1)顧客選定の甘さ:理想顧客像(ICP)を定義しただけで満足。実態は決裁スピードが遅い層に時間を浪費。
(2)価格の根拠不足:原価×目標粗利で逆算。顧客の削減対象(Budget Kill List)に入っている事実を軽視。
(3)商談の型崩れ:デモ先行で痛み(Pain)の解像度が低いまま比較に突入。意思決定に届かない。
(4)レビュー不全:KPI管理はするのに、“原文の顧客の声”が会議に上がってこない。次回改善に繋がらない。
3. それでも前に進む理由
限界は終わりではなく、“仕組みを作り直すタイミング”だ。私は現場に戻り、痛み→提案→検証のサイクルを最小単位で回した。
週次で「勝ち/負けタグ」を付け、軽量MEDDICCでレビュー。価格議論は感覚を禁じ、根拠(導入負荷・決裁構造・代替案)をセットで語る。
できることから小さく標準化した瞬間、“属人の偶然”が“チームの必然”に変わった。
まとめ
- 限界の正体は、成果とプロセスのズレにある
- 選定・価格・型・レビュー——4点が揃って初めて再現性が生まれる
- 小さな標準化を週次で回す。学習の速度が、疲弊を上回る
次回予告
vol.4『「辞める決断」に至るまで』
限界を見たあとに、私が選んだのは「続ける工夫」ではなく「降りる勇気」だった。決断の裏側と、その後の現場を語る。
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