伝わらない資料は、ないのと同じ。
30枚の完璧な提案書で沈黙をつくり、1枚の荒削りな企画で商談が進んだ。
自信作の“全部盛り”資料は、相手の時間も集中力も奪っていた。決裁者の席に座って初めて、私は「要点の欠落」がどれほど致命的かを知った。
余白を増やし、メッセージを1つに絞った瞬間、会議室の空気が変わった。

こんな人に読んでほしい
- 提案が通らず「説明不足」と思い込み、資料が膨らみ続けている人
- 決裁者の前で話が長くなり、要点がぼやけがちな人
- 営業会議が“資料チェック”で終わり、顧客対話が足りないと感じている人
この記事で伝えたいこと
- 「相手が動ける最小情報量」という視点の大切さ
- “1枚企画”の基本構成と運用のコツ
- 決裁者目線での要点設計(指標・意思決定材料)の作り方
1. 長文提案で失った3つのもの
元社長の私は、失注が続くたびに資料を厚くした。結果は逆。①会議時間の半分が説明で消える、②核心の「意思決定条件」を提示できない、③質疑が仕様の枝葉に流れる──この三拍子で、商談は動かない。
決裁者に必要なのは「効果・コスト・リスク・実行ステップ」の4点セット。それ以外は補遺に落とすべきだった。
2. “1枚企画”で揃えた意思決定材料
A4一枚に絞った構成はこうだ。
・目的(現状の損失額/機会損失を数値で)
・打ち手(1メッセージ)
・期待効果(KGI/KPIと想定インパクト)
・必要投資(初期/運用、社内の関与部門)
・リスクと回避策(やらない場合のリスクも)
・次の一手(パイロットの範囲・期間・判定基準)
これで初回商談の質疑が“実行の可否”に変わり、2週間止まっていた案件がその場でPoCに進んだ。
3. それでも前に進む理由
厚い資料は安心材料、1枚は勝負材料。怖いのは、削ることではなく「決めること」だ。何を捨て、何を残すか──経営者が矢面に立って要点を決めることで、チームの提案は速く、強くなる。失敗続きの私が続けられたのは、1枚が会話を生み、会話が前進をつくると知ったからだ。
まとめ
- “全部説明”は相手の意思決定を遅らせる
- 決裁者が欲しいのは「効果・コスト・リスク・次の一手」
- まずはA4一枚で会話を起こし、資料は後から足す
次回予告
vol.50『初回訪問で詰め込みすぎた日——ヒアリング7割に変えた理由』
次回は、初回から“提案し過ぎて”逃した案件の話。聞く比率を上げた途端、成約率が戻った背景と、質問設計の失敗談を綴ります。
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