vol.50『初回訪問で詰め込みすぎた日——ヒアリング7割に変えた理由』

シリーズ①:Re:START NOTE|”止まりながら進む日々”

話した“量”が、信頼の“質”を下げていた。

初回から機能説明と事例を山ほど並べ、相手の課題を取りこぼしたのは私だ。

社長として「短時間で価値を証明したい」という焦りが、デモと実績の洪水を生んだ。相手はうなずくが、次の約束は曖昧。なぜか——気づけば私は“聞く”のではなく“言い切る”ことで安心しようとしていた。

沈黙を恐れず、初回はヒアリング7割へ。数字が先に、関係が後だった順番を、やっと逆にできた。

初回訪問のノートに残る「7:2:1」の手書きメモと砂時計

こんな人に読んでほしい

  • 初回から説明しすぎて「検討します」で終わりがちな経営者・営業責任者
  • 商談は多いのに案件化率・次回設定率が伸びないと感じている人
  • プロダクトに自信があるほど話が長くなる自覚がある人

この記事で伝えたいこと

  • “価値提供”の前提は“価値の定義”を一緒に作ること(ヒアリング設計の大切さ)
  • 初回訪問の比率設計(7:2:1)と、質問→要約→合意の運び方
  • 次回化(日時・テーマ・宿題)まで決め切るための一歩

1. 「説明大全」だった初回が、生産性を奪っていた

元社長の私は、初回からプレゼン25分・デモ15分・質疑10分。今思えば、相手の業務プロセスや意思決定の構造を知らないまま、
「当てにいく」説明で時間を燃やしていた。終盤に価格を聞かれ、慌てて割引の話まで出す——結果、解像度の低い見積で追いかけ続ける消耗戦。
失注後にわかったのは、顧客は「現状のKPIの詰まり」「社内合意の壁」「導入後の内製体制」こそ聞いてほしかったという事実。
私は“商品”を売り、相手は“変化”の相談相手を探していた。ここから初回の設計を作り直した。

2. 比べないことが教えてくれたもの

競合と機能を比べる前に、顧客の“現在地”と“社内の地図”を一緒に描く——それが私たちらしさだと腹を決めた。
以後はスライドを最小化し、ヒアリング7割・仮説提示2割・次回設計1割に固定。
質問は「事実→解釈→影響→意思決定」の順で浅瀬から深掘りへ。最後に私の言葉で1分サマリーを返す(要約→確認→不足確認)。
競合の“できること一覧”ではなく、顧客の“やりたいことの順番”を尊重したら、次回設定率が跳ねた。

3. それでも前に進む理由

沈黙は怖い。だが沈黙は、相手が“考えている時間”でもある。私はポケットに小さな砂時計を忍ばせ、答えを急がない練習をした。
その代わり、面談の最後は必ず「次回の日時・テーマ・双方の宿題」を口頭とメールで確定。
こうして商談は“説明会”から“共同編集”に変わり、単価と継続率が改善した。経営者が話す量を減らすことは、成果を手放すことではなかった。

まとめ

  • 初回は「説明」より「定義」。ヒアリング7割で課題の言語化を一緒に作る
  • 比べる相手は競合ではなく、顧客の意思決定プロセスと現場の事情
  • 締めは“次回の日時・テーマ・宿題”の三点セットで前進を確定させる

次回予告

vol.51『沈黙が怖かった——“間”が商談を前に進めた日』

次回は、私が一番苦手だった“間”との付き合い方。読者のみなさんからも共感の多い「沈黙が怖くて喋りすぎる」問題を、具体的な改善ステップと失敗談でお届けします。

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