vol.53『紹介が止まった日——頼み方を変えたら再び回り始めた』

シリーズ①:Re:START NOTE|”止まりながら進む日々”

「お願い」では動かない。動くのは、相手の負担を設計した“頼み方”。

「誰か紹介してください」——そう言うほど、紹介は減っていった。

元社長の私は、数字が苦しいときほど紹介依頼のメールを乱発した。反応は薄く、既存顧客の温度も下がった。ある日、恩顧客にこう言われた。「紹介したい気持ちはある。でも、あなたの依頼だと相手に説明が難しい」。刺さった。

“頼み方”を作り直したら、止まっていた紹介が再び回り始めた。

紹介が動く“依頼テンプレ”と負担設計のメモ

こんな人に読んでほしい

  • 紹介が一時は回ったのに、最近ぱったり止まった経営者・営業責任者
  • 「紹介ください」と言うと関係が少し気まずくなる感覚を持っている人
  • 紹介の質がばらつき、受注率・商談効率が落ちている人

この記事で伝えたいこと

  • 紹介は“お願い”ではなく“設計”(誰に・何を・どう渡すか)という視点
  • 紹介者の心理負担・手間を最小化する依頼の作法
  • 仕組み化(タイミングとKPI)で再現性をつくる一歩

1. 依頼の設計を変えたら起きたこと

私がやめたのは「幅広く誰か紹介してください」という丸投げ。代わりに、紹介者の負担をゼロに近づける三点セットを用意した。

① “この人に”の指名:LinkedInや顧客の登壇資料から3名以内の実名を挙げ、「この役割の方と10分だけ」まで具体化。
② “この一言で”の文面:紹介者がそのまま転送できる80〜120字のテンプレを用意(価値/所要時間/次のアクションの順)。
③ “この資料だけ”の添付1枚の“問題→効果→リスクと対策→次の10分”の図だけ。厚い資料は添えない。

さらに依頼のタイミングを、契約直後ではなく成果の初兆(NPS回答・初回効果実感・プロジェクト完了)に限定。結果、紹介の返信率は18%→41%に、紹介起点の受注率は22%→38%にまで戻った(社内計測)。

2. 比べないことが教えてくれた“紹介者の成功定義”

以前の私は「競合より自社が優れているか」を延々語っていた。だが紹介者が恐れているのは自分の信用毀損。つまり比較ではなく、リスク最小化が鍵だと理解した。そこで依頼文は次に置き換えた。

“売り込まない”保証(10分の情報交換/その場での提案禁止)
“断ってOK”の逃げ道(関心がなければ無返信で問題なし)
“相手メリット”の明文化(業界ベンチマーク・事例PDF進呈)

「自社を語る」より「紹介者を守る」。比べる対象を競合から紹介者の体験に変えたら、動きが変わった。

3. それでも前に進む理由

仕組み化しない紹介は続かない。私は次の3つをルールにした。

・タイミングKPI:“依頼送付は成果初兆から48時間以内”を必須に。
・母集団KPI:四半期ごとに“紹介可能者名簿(HVC:High Value Contacts)30名”を更新。
・質KPI:紹介起点商談の“決裁者同席率”を追う(数より濃度)。

数字が動かない週もある。それでも前に進めたのは、「誰かの信用を守りながら価値を渡す」という自分のやり方が、ようやく会社の仕組みに乗ったからだ。

まとめ

  • 紹介は“お願い”ではなく“負担設計”で動く
  • 指名・一言テンプレ・1枚資料の三点セットで再現性を出す
  • 紹介者を守る約束(売り込まない/断ってOK)を先に示す
  • タイミング・母集団・質のKPIで回り続ける仕組みに

次回予告

vol.54『返信が遅れた日——“24時間ルール”で信頼を取り戻した』

次回は、私が何度もチャンスを逃した“返信の遅れ”。元社長の失敗から生まれた、読者の皆さんも今日から使える「24時間ルール」とテンプレ3種(初動・保留・お断り)を公開します。

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