スピードは愛着を生む。内容より先に、まず「返す」。
気づいたときには、相手の熱量が冷めていた。
元社長の私は、提案書づくりを優先して返信を後回しにした。たった48時間の遅れが、社外の信頼と社内のリズムを崩した。忙しいのは理由にならない——そう腹を括り、「24時間ルール」を会社の営業標準にした。
結果、商談化率と失注後の再接続率が目に見えて戻った。信頼は、返信の早さから回復できる。

こんな人に読んでほしい
- 問い合わせ・紹介メールの初動が遅れがちな経営者/営業責任者
- 「考えてから返す」癖で、結局タイミングを逃してしまう人
- 商談の温度が落ちる理由がはっきりしないと感じている人
この記事で伝えたいこと
- 返信は“作業”ではなく“体験設計”という視点
- 24時間ルール(初回反応SLA)と3つの即時テンプレの効用
- チームで継続するための計測KPIと運用リチュアル
1. 「24時間ルール」との出会いで変わったこと
私が決めたのはシンプルだ。
・初回反応は24時間以内(内容が未確定でも“受領+次の約束”を返す)
・社外は営業時間外でも既読なら短文で反応(「明日◯時に詳細返信します」)
・社内は4時間以内(経路はSlack/メールどちらでもOK、痕跡を残す)
実装は“個の努力”ではなく仕組みで行った。受信箱を以下の3フォルダに自動振り分けし、朝・昼・夕の3回で一気に処理する。
① NOW(2分で返せる:スケジュール確認不要・定型)
② PLAN(調整が必要:カレンダー/資料待ち)
③ NO(お断り・保留の判断が必要)
運用1ヶ月で、初回返信の中央値は27時間→3.6時間、初回返信24h達成率は38%→86%に改善。温度が下がって失った商談の“戻り”も出てきた。
2. 比べないことが教えてくれた“短文の価値”
以前の私は「完璧な回答」を返そうとして時間を失っていた。競合より良い提案文を書くことに比重を置き、相手の不安(届いているか、進んでいるか)には無頓着だった。
そこで、“短文でも安心を渡す”テンプレをチーム標準にした。コピペで良い、まず安心を渡す。
【初動テンプレ(受領)】
「ご連絡ありがとうございます。内容は受領しました。明日◯/◯(火)13:00までに回答します。取り急ぎ受領のみ失礼します。」
【保留テンプレ(調整中)】
「本件、◯◯の確認に48時間いただきたいです。中間報告は明日17:00に共有、最終は△日12:00でお約束します。」
【お断りテンプレ(代替提示)】
「今回は◯◯の要件に合致せずご一緒できません。代替としてA社の◯◯か、当社の簡易診断(15分・無償)をご提案します。ご期待に沿えず恐縮ですが、また最適なテーマでぜひ。」
競合より良い長文より、“いま動いている”という手触りが信頼をつくるとやっと理解した。
3. それでも前に進む理由
ルールは守られて初めて価値が出る。そこで経営としてKPIを明確にした。
・初回返信SLA達成率(24h):週次80%以上を目標(個人/全社)
・初回返信中央値:4時間未満
・“未返信48h超”件数:ゼロを継続(朝会で晒す)
運用リチュアルは、朝会で前日未返信を棚卸し→昼にSLAボード更新→夕方に翌日持ち越しゼロ。忙しい日は破りたくなる。それでも前進できたのは、「短文で約束する」という小さな誠実が、最終的に受注と紹介に効くとチーム全員が体感したからだ。
まとめ
- 返信は“内容の正しさ”より“初動の早さ”が体験を決める
- 24時間ルール+三つの短文テンプレで安心を先に渡す
- 仕組み(振り分け・3回処理)とKPIで継続可能にする
- 短文でも約束を言葉にする——それが信頼の最小単位
次回予告
vol.55『アポが取れない週——“3行アウトバウンド”で会える確率が上がった』
次回は、私が何度も心が折れた新規アポ獲得の話。読者の皆さんにも使える、3行だけの初回メール/リマインド/クロージングの書き分けと、週次で回す数値設計を公開します。
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