vol.65『見積は2枚——“A/Bオファー”で値引きが消えた夜』

シリーズ①:Re:START NOTE|”止まりながら進む日々”

⏱ 読了目安:約3分

「いくらまで下げられますか?」は、設計で終わらせる。

その夜から、私は見積を1枚で出すのをやめた。

元社長として“払う側”を経験して気づいたのは、単価の話は「含む/含まない」が曖昧だから起きるということ。営業側に回った私は、見積を「A:最短成果」「B:コスト最小」の2枚に固定した。

議論は値引きではなく設計の意思決定へ。——この「A/Bオファー」で、値引き依頼はほぼ消えた。

“A=最短成果 / B=コスト最小”で意思決定を設計へ移す

こんな人に読んでほしい

  • 見積提出のたびに値引き交渉に巻き込まれる営業・経営者
  • 「他社は安い」の一言で説明が長引くことに疲れている人
  • 単価ではなく価値と前提で合意を取りたいチーム

この記事で伝えたいこと

  • 価格は“前提の合意”であり、2枚化でズレを可視化できるという視点
  • A/Bオファーの作り方(含む/含まない・KPI・リスクの明記)
  • 明日から使えるテンプレと、提示時の一言スクリプト

1. “A/Bオファー”との出会いで変わったこと

以前は1枚見積+口頭説明。結果、単価の押し引き→消耗→決裁遅延が定番コース。
そこで、見積は必ず2枚に。構成はこうだ。

  • A:最短成果(初速最優先)… 初期導入/移行/教育/運用/改善サイクルをフル含有。KPI到達確率を高く設計。
  • B:コスト最小(段階導入)… 移行や教育を一部内製化。KPI到達はA比で遅延前提。サポートは時間制。

各案に必ず付けるのは、①含む/含まない ②KPI/期限 ③想定リスクと対応 ④価格分解(固定/変動/成果連動)
これで会話は「どれを削る/何を伸ばす」に変わり、値引きは“設計変更”に言い換えられる。

2. 比べないことが教えてくれたもの

競合比較は「単価勝負」へ流れがち。元社長の私は、“自社に合う設計”を一緒に作る会社なら高くても決めてきた。だから営業側の私は、A/Bで意思決定の軸を先に図解する。

  • 基準は3つだけ:KPI到達確率 / 初期コスト / 運用負荷
  • 妥協点の明記:「Bを選ぶ=KPI達成は+2週、保守は平日対応のみ」
  • 上振れの描写:Aで成功時の拡張(成果連動)の上限も示す

“比べない”とは、他社ではなく自社の基準に合わせること。ここまで整えると、値引きの余地より選択の理由が見える。

3. それでも前に進む理由(テンプレ&スクリプト)

見積テンプレ(表紙1枚に要点を集約)

案件名/日付
目的:◯◯を◯月末までにKPI◯◯達成
A(最短成果):初期◯円/月額◯円/導入◯週
  含む:移行/教育/運用/改善  KPI到達確率:高
B(コスト最小):初期◯円/月額◯円/導入◯週
  含む:運用のみ(移行/教育は内製)KPI到達確率:中
リスク:トラフィック急増/社内権限 対応:週次レビュー+増員オプション
次アクション:15分で再現可否判定 → 契約/分割導入の選択

提示時の一言(60秒)

「本件は値引きの話ではなく設計の選択です。
Aは短期KPIを優先、Bは費用最小で進めます。
削る/伸ばすの影響は表紙に明記。どちらにしますか?
迷う場合は、今月はBで稼働→来月Aへ拡張の二段構えも可能です。」

まとめ

  • 見積は2枚に固定:A=最短成果/B=コスト最小
  • 「含む/含まない」「KPI/期限」「リスク/対応」を表紙で可視化
  • 値引きではなく設計変更に言い換え、意思決定を速くする

次回予告

vol.66『契約前の“お試し2週間”——無料じゃないのに離脱が減った理由』

次回は、無料トライアルをやめて“有料・軽量・即実感”に切り替えた話。契約率と満足度が同時に上がった設計と台本を公開します。

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