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否決は、静かに積み上がる“負け試合ログ”だ。
「またダメか…」そう思って削除した議事録や提案書が、半年後・一年後に『あの時のメモ、まだありますか?』と求められる。
元社長時代、僕は否決された案件を「黒歴史フォルダ」に放り込んで見ないようにしていた。けれど会社を守る立場になってみると、負け試合の中にしか落ちていない“現場の本音”があると気づいた。
内側の焦りを抱えたまま、それでも足元の一歩を積み上げるために——今回は、否決された提案を「社内資産」に変えていく視点をまとめてみる。

こんな人に読んでほしい
- 提案や見積もりが否決されるたびに、自分まで否定されたように感じてしまう人
- 「あの案件、絶対いけたのに…」とモヤモヤを引きずりがちな営業・社長の人
- 負け試合を、次の教育や採用、新規事業にどうつなげていけばいいか悩んでいる人
この記事で伝えたいこと
- 否決された案件こそ“社内資産”として再利用できるという視点
- 負け試合ログを、「人」ではなく「仕組み」として扱うための向き合い方
- 半年後・一年後に効いてくる“負け試合の残し方・見せ方”の一歩
1. 否決ログは「黒歴史」ではなく、現場の生データ
元社長の感覚で言うと、否決って本当にしんどい。
プレゼンのために夜中まで資料を作り、現場にも根回しして、それでも役員会で一言「今回は見送りで」で終わる。
正直、あの瞬間はすべて消してしまいたくなる。
でも、社内を俯瞰する立場になると見え方が変わる。
否決された提案書には、
- 決裁者がどこで不安を感じたのか
- 現場が本音ではどこまでリスクを取りたくないのか
- 「ここさえ通ればOKだった」という条件付きOKのライン
が、かなり生々しく残っている。
これって、実は営業研修でも採用面接でも、新規事業の企画会議でも、そのまま使える“教科書”なんですよね。
僕がやっていたのは、負け試合の案件をフォルダ分けして、
「なぜダメだったのか」「誰がどこでブレーキを踏んだのか」を、感情ごとメモしておくこと。
たとえば、
- 「コスト削減“だけ”では決裁されないパターン」
- 「現場の不安が解消されないと、役員も前に出てこないパターン」
こんな風にラベリングしておくと、次の案件で
「あ、これ前も同じ形で落ちたやつだ」と気づける。
内側の焦りをそのままぶつけて突っ走るのではなく、足元の一歩を冷静に選べるようになっていく。
2. 「人」を責めず、「パターン」として棚に上げる
負け試合が続くと、つい自分や部下を責めたくなる。
「なんであそこで押し切れなかった」「もっと粘れただろ」って、言った側も言われた側も疲れるやつです。
でも、否決を“人の能力”として評価し始めると、社内の空気は一気に重くなる。
僕が途中から切り替えたのは、
- 案件ごとに「否決パターン名」をつける
- レビュー会では、人ではなく「パターン」を題材に話す
というやり方でした。
たとえば、
- 「KPIだけ立派で、現場オペレーションが見えていなかった案件」
- 「導入後の運用イメージを、決裁者に見せ切れていなかった案件」
こうしてラベリングすると、メンバーも
「ああ、これは“運用イメージ不足パターン”ですね」
という言い方ができる。
比べる対象を「人」から「パターン」に変えるだけで、
感情のトゲが少し抜けて、学びのテーブルに乗せやすくなる。
否決ログが、静かに“教育コンテンツ”へと格上げされていく瞬間です。
3. 半年後・一年後に効いてくる“負け試合の残し方”
一度通らなかった案件が、半年後・一年後に別の形で返ってくることがある。
景気、社内の方針、担当者の異動…条件が変わると、同じ話でも急に通りやすくなる。
そのとき、過去の否決ログが残っているかどうかで、スタート地点がまるで違う。
- 当時の議事録(誰がどんな不安を口にしたか)
- 条件付きOKとして出た「ここまでなら」のライン
- 現場メンバーの表情や温度感をメモした一言コメント
これらが残っていれば、再提案のときに
「前回の不安は、ここをこう変えました」
と、相手の記憶ごとアップデートできる。
教育・採用・新規事業でも同じで、
負け試合のログは、そのまま「ケーススタディ」として使える。
実在の案件だからこそ、机上の空論よりも何倍も刺さる教材になる。
内側の焦りは消えなくていい。
大事なのは、「一度の否決で、すべてをゼロに戻さないこと」。
負け試合を、静かに棚に上げておくだけで、半年後・一年後に思わぬところで効いてくる。
そう信じて、今日の否決ログも一つ、社内資産フォルダに放り込んでおきたい。
まとめ
- 否決された案件には、現場の本音や決裁のツボが“生データ”として残っている
- 人ではなく「否決パターン」をラベリングすることで、学びに変えやすくなる
- 負け試合ログを残しておくと、半年後・一年後の再提案や教育・採用で武器になる
次回予告
vol.129『“再訪問の一手”——忘れられた案件に火がつく瞬間』
次回は、一度否決された案件に、どんなタイミングで、どんな切り口で“もう一度”アプローチしていくのかを書きます。元社長時代に実際あった「まさかの逆転受注」の裏側と、再訪問で心が折れないためのスタンスについてまとめていきます。
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