vol.129『“再訪問の一手”——忘れられた案件に火がつく瞬間』

シリーズ①:Re:START NOTE|”止まりながら進む日々”

⏱ 読了目安:約3分

再訪問は、“売り込み”ではなく記憶のスイッチを押しに行く行為だ。

一度フラれた案件ほど、再訪問の前日はお腹が痛くなる。

元社長時代、「もう二度と行かなくていいのでは…」と思った案件ほど、半年後・一年後に「実はあの話、まだ頭に残っていてね」と言われて、まさかの逆転受注に変わったことが何度かあった。

内側の焦りを抱えたまま、それでも足元の一歩として“もう一度会いに行く”。今回は、忘れられたように見える案件に、どうタイミングと切り口を変えて火をつけにいくのか、元社長目線で整理してみる。

一度は否決された案件に、静かにもう一度会いに行く再訪問のシーンを象徴した見出し画像

こんな人に読んでほしい

  • 一度断られた案件に、もう一度アプローチする勇気が出ない営業・社長の人
  • 「再訪問した瞬間、空気が気まずくなるのが怖い」と感じている人
  • 長期でお客様と付き合いたいのに、短期の結果に追われて動けなくなっている人

この記事で伝えたいこと

  • 再訪問は“売り込み”ではなく「記憶のスイッチ」を押し直す行為だという視点
  • タイミングと切り口を変えるだけで、同じ提案でも届き方が変わるということ
  • 内側の焦りと付き合いながら、心が折れない再訪問のスタンス

1. 「もう終わった」と思っていた案件が動き出した日

僕が社長をしていた頃、あるシステム導入の提案をして、見事にフラれたことがある。
現場には好感触、でも最終決裁の場で「今年は投資フェーズではない」と一刀両断。
提案書も見積もりも、そのままフォルダの奥に眠った。

そこから半年後。
別件でその会社の近くまで行く予定があり、「ついでに顔だけ出そうかな…」と迷いながらも、腹をくくって再訪問した。

結果、雑談の中でこんな言葉が出てきた。

「実はあの時の提案、今でも一部のメンバーの間で話題に出るんですよ。」
「今年になって、人が増えて現場が回らなくなってきていて…もう一回、あの資料見せてもらえます?」

正直、驚いた。
こっちは“完全に終わった案件”として扱っていたのに、先方の中ではずっと「検討フォルダ」に残っていた。

この時に気づいたのは、
「否決=記憶から消去」ではない ということ。
タイミングと事情さえ変われば、あの時の提案が“ちょうどいい解決策”として再浮上することがある。

再訪問の一手とは、派手なクロージングでも、押し売りでもなく、
「あの話、まだ頭の片隅にありませんか?」
と、そっと記憶のスイッチを押しに行く行為なんだと思う。

2. 比べるのは「自分の価値」ではなく「タイミングと切り口」

一度否決された案件に行くとき、いちばんしんどいのは“自分比べ”だ。
「あの時より説得力のある自分になれているのか」「また断られたら、いよいよ見切りをつけられるのでは」——そんな不安が頭の中でぐるぐる回る。

でも、何件も再訪問を繰り返すうちに分かってきたのは、
多くの場合、否決の原因は“自分の価値”ではなく“タイミングと切り口” だということ。

たとえば、同じ提案でも、

  • 「コスト削減」の話として持っていったときは響かなかった
  • 半年後、「人手不足対策」として話したら、一気に現場が前のめりになった

ということが普通に起きる。

比べるべきは、「前回の自分」ではなく、

  • 今回はどんな前振りで話を切り出すか
  • その会社の“今の課題”と、どう結びつけるか
  • 誰と一緒に話を聞いてもらうのがベストか

といった「設計」の部分だったりする。

自分の価値を測り直す材料として再訪問を使ってしまうと、心が折れる。
そうではなく、
「市場とタイミングを確認する場」 として再訪問を捉えると、少しだけ気持ちが軽くなる。

3. それでも再訪問する理由

それでも正直、再訪問は怖い。
「また断られたらどうしよう」「忙しい中、時間を取ってもらうのが申し訳ない」——そんな気持ちが消えることはほとんどない。

じゃあ、なぜそれでも再訪問するのか。
僕なりの答えはシンプルで、

「一度話を聞いてくれた人とは、短期の売上を超えた関係をつくりたいから」
というところにある。

再訪問を繰り返す中で、こんなことが起きる。

  • 今回は導入に至らなくても、別の会社を紹介してもらえる
  • 担当者が転職した先で、「前の会社で聞いたあのサービス、覚えてますか?」と声をかけてくれる
  • 数年ぶりに連絡が来て、「今度こそお願いしたい」と言ってもらえる

どれもこれも、「一度フラれた後も、ちゃんと顔を出し続けた」からこそ生まれたご縁だ。

内側の焦りは、きっと一生ゼロにはならない。
それでも、足元の一歩として、今日できることはただ一つ。
「あの案件、そろそろタイミングが変わっていないか?」
と、自分からドアをノックしに行くこと。

忘れられたように見える案件に、静かに火をつけにいく。
その繰り返しが、気づけば「長く続く仕事」をつくってくれているのかもしれない。

まとめ

  • 否決=記憶から消去ではなく、条件が変われば再び浮上する“保留フォルダ”だと捉える
  • 再訪問で比べるのは「自分の価値」ではなく「タイミングと切り口」の設計
  • 短期の結果だけでなく、長期の関係づくりの一歩として再訪問を積み重ねていく

次回予告

vol.130『“未完了メモ”——やり残し案件を武器に変えるノート術』

次回は、「あの件どうなりましたっけ?」で終わらせないための、案件メモの残し方について書きます。元社長時代、社内外の“やり残し”をどう整理し、半年後・一年後の武器に変えていったのか──小さなノート術とメンタルの守り方をまとめていきます。

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