vol.135『“夕方の手放しメモ”——持ち帰らない仕事を増やすコツ』

シリーズ①:Re:START NOTE|”止まりながら進む日々”

⏱ 読了目安:約3分

「今日はここまで」と決める一行が、夜の自分を救ってくれる。

オフィスを出ても、電車の中でも、家に帰ってからも、頭の中はずっと仕事のまま——元社長時代の僕は、そんな日々を何年も続けていた。

PCを閉じても、脳内ではメールの返信文を考え続ける。食事中に、ふと「さっきのあの一言、まずかったかな」と反省会が始まる。布団に入ってからも、明日の会議のシミュレーションが止まらない。

そこから少しずつ学んだのは、仕事を「終わらせる技術」ではなく、「いったん手放す技術」が必要だということ。今回は、退勤前10分でできる“夕方の手放しメモ”と、仕事を家まで持ち帰らないための小さなコツをまとめていく。

夕方のデスクで、ノートにそっとメモを書き込み仕事を手放しているシーン

こんな人に読んでほしい

  • 退勤後も頭の中だけ仕事モードが続き、心が休まった気がしない人
  • 「今日やり残したこと」を考えながら帰宅し、家族との時間に集中できない人
  • 再スタートの毎日を、夜まで引きずらずに切り分けたい社長・営業の人

この記事で伝えたいこと

  • 「仕事を手放す」ための視点と、小さなメモの使い方
  • 退勤前10分でできる、頭とタスクの片づけ方
  • 内側の焦りを抱えたままでも、夜の自分を軽くする一歩

1. 仕事を“持ち帰る”クセに気づいた日

社長をしていた頃の僕は、毎日のように仕事を家に持ち帰っていた。
と言っても、物理的な資料ではなく「頭の中の仕事」だ。

電車の中では、さっきの会議の反省点を考え続ける。
家に着いても、ふとした瞬間に「明日のあの商談、どう切り出そうか」と頭の中でプレゼンが始まる。
そして夜、布団の中で「今日、あの一言言わなきゃよかったな」と自分責めが始まる。

ある日、そんな状態のまま数週間が過ぎた頃、ふと妻にこう言われた。
「家にいる時間も、なんかずっと会社にいる顔してるよね。」
ドキッとした。体は家にいるのに、心はまだ会社から帰ってきていなかった。

そこで初めて、「仕事を終わらせる時間」を退勤直前にちゃんと取っていなかったことに気づいた。
PCを閉じるタイミング=仕事の終わり、ではなかったのだ。

そこから、退勤前10分で「頭の中を外に出してから帰る」ためのメモを始めてみた。
それが、“夕方の手放しメモ”との出会いだった。

2. 退勤前10分でできる“夕方の手放しメモ”3ステップ

手放しメモといっても、難しいことは何一つしていない。
大事なのは、「今、頭の中にあるものを全部覚えておこうとしない」こと。
僕が実践していたのは、この3ステップだった。

① 今日の“完了”を3つだけ書き出す

ノートでもデジタルでもいいので、「今日終わったこと」を3つだけ書く。
大きな成果でなくていい。
「問い合わせ対応を返し切った」「クレームの一次対応まで完了」「提案書のたたき台を作った」——そんなレベルで十分だ。

これは、「今日の自分はちゃんと働いた」という証拠を残す作業でもある。
この一手間だけで、夜の自己嫌悪が少し弱くなる。

② “持ち越しリスト”をそのまま書き出す

次に、「明日以降に持ち越すタスク」を、思いつく限り箇条書きにする。
ここでは優先順位も整理しない。
とにかく頭の中から外に出すことを優先する。

「メール返信3件」「〇〇さんに確認」「見積もりの再提出」「社内共有資料を直す」など、
気になっていることを全部書き出す。
ポイントは、雑でもいいから、とにかく残しておくこと

③ 「今日はここまで」と一行だけ締めくくる

最後に、ページの一番下に一行だけ書く。
「今日の仕事はここまで。続きは明日の自分へ。」
たったこれだけ。
でも、不思議とこの一行があるだけで、ノートを閉じやすくなる。

ここまでやってからPCを閉じると、帰り道の頭の静かさがまるで違う。
「あれもやらなきゃ」が浮かんできても、「ノートに書いてあるから大丈夫」と自分に言い聞かせられる。

3. それでも持ち帰ってしまう自分を責めないために

もちろん、手放しメモをしていても、仕事を完全に頭から消せない日もある。
大事な商談の前日、大きなトラブルの直後、会社の転機になりそうな案件——どうしても頭がそっちに向いてしまう夜もある。

そんなときに意識していたのは、
「全部手放すこと」をゴールにしないということだった。

目標は、「8割くらいはノートに預けて、2割だけを抱えて帰る」イメージ。
完全にゼロにしようとすると、できなかった自分をまた責めてしまう。
それよりも、

  • 今日は手放しメモを書けただけでOK
  • 昨日より少しだけ、頭の中の荷物が減っていればOK

そんなふうに、自分へのハードルを下げるようにしていた。

再スタートの毎日は、どうしても「もっとやらなきゃ」という焦りと隣り合わせだ。
でも、その焦りを夜まで持ち運び続けると、翌日のスタートラインもだんだん削れていく。

だからこそ、夕方の10分で、
「今日はここまで」と自分に言ってあげる時間を作る価値がある。
メモ1ページ分のスペースが、夜と明日の自分を守ってくれる。

まとめ

  • 仕事を家に持ち帰ってしまうのは、“終わり”を決める儀式がないから起きやすい
  • 夕方の手放しメモ(今日の完了3つ・持ち越しリスト・「ここまで」の一行)で、頭の荷物を一度外に出す
  • 全部手放すのではなく、「8割預けられたら合格」くらいの感覚で、夜と明日の自分を少しずつ軽くしていく

次回予告

vol.136『“週のスタートライン”——月曜に振り回されない準備術』

次回は、毎週やってくる月曜日を「憂うつな日」から「再スタートの基準日」に変えていく話を書きます。元社長時代に試行錯誤していた、金曜・日曜・月曜それぞれの小さな準備と、週のスタートラインを自分で引き直すコツをまとめていきます。

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