vol.207『「リーダー」への打診——元社長を襲う、”あの時”のトラウマとの決別』

シリーズ①:Re:START NOTE|”止まりながら進む日々”

⏱ 読了目安:約3分

「君にチームを任せたい」——その言葉は、俺にとって救いではなく、最悪のフラッシュバックだった。

「もう二度と、人の人生を背負うなんて御免だと思っていた。」

現場での「一勝」を掴み、ようやく自分の足元が固まり始めた矢先。マネージャーから告げられたのは、小規模な営業チームのリーダーへの昇格打診だった。かつて数百人の社員を抱え、そしてその組織を自分の手で崩壊させてしまった俺にとって、「リーダー」という響きは、権威の象徴ではなく、逃れられない呪縛のように聞こえた。

去っていく社員の背中、静まり返ったオフィス。あの地獄のような景色が、再び幕を開けるのではないか。俺を襲ったのは、再起への期待ではなく、底知れない恐怖だった。

「地位」への執着を捨てたはずの俺に、再び「責任」という名の試練が訪れる。

こんな人に読んでほしい

  • 過去の失敗が原因で、責任ある立場を避けている人
  • 「自分はリーダーに向いていない」と自己評価を下している人
  • 新しい一歩を踏み出したいが、過去のトラウマが足を引っ張っている人

この記事で伝えたいこと

  • 「管理」することと「支える」ことの決定的な違い
  • 過去のトラウマは、克服するのではなく「抱えたまま」進むという選択
  • リーダーシップの原点は、技術ではなく「弱さを知ること」にある

1. 「組織の崩壊」という消えない傷跡

マネージャーの言葉を聞きながら、俺の手は無意識に震えていた。社長時代の俺は、数字がすべてだった。ついてこれない人間は切り捨て、組織を拡大させることだけに躍起になっていた。その結果、何が起きたか。信頼していた右腕が去り、社員の心は離れ、最後には「箱」だけが残った。

あの日、誰もいなくなった社長室で感じた絶望。それを思い出すと、今の平穏な「一営業マン」としての生活が、どれほど守られたものだったかを痛感する。リーダーになるということは、再び誰かの人生を左右する権利を持ってしまうということだ。今の俺に、その資格があるのだろうか。

2. 比べないことが教えてくれた「新しいリーダー像」

ふと、先日のプレゼンで俺の裾を引いてくれた若手、田中の顔が浮かんだ。あの時、俺を救ったのは社長時代の「カリスマ性」ではなく、今の俺の「不器用な誠実さ」を信じてくれた仲間の手だった。

かつての「君臨する社長」としての俺と、今の「泥臭い営業マン」としての俺を比べる必要はない。今の俺ができるリーダーシップは、指示を出すことではなく、誰よりも現場の痛みを知る人間として、仲間の隣で泥を啜ることではないのか。完璧なリーダーになろうとするから怖いのだ。不完全なまま、かつての失敗を教訓としてさらけ出せるリーダー。それが、今の俺が目指すべき「第二の創業」の姿だと気づき始めた。

3. それでも前に進む理由

「一度壊した俺だからこそ、作れるチームがあるかもしれない。」マネージャーにそう答えた時、心の中の霧が少しだけ晴れた気がした。恐怖が消えたわけではない。ただ、その恐怖を抱えたまま進むことが、俺にできる唯一の贖罪であり、成長なのだ。

看板も肩書きも捨てて手に入れたのは、地位への執着ではなく、誰かを「生かす」ための覚悟。かつての俺が最も欠いていたピースを、今、更地の上で拾い上げようとしている。リーダーとしての俺の戦いは、かつての復讐ではなく、全く新しい物語の始まりだった。

まとめ

  • 過去の失敗は、現在のリーダーシップを磨くための「最高の教材」になる
  • 「導く」のではなく、同じ視点で「支える」覚悟を持つ
  • トラウマを拒絶するのではなく、それを受け入れて一歩を踏み出す

次回予告

vol.208『初陣のチームミーティング——元社長の慢心を捨て、”支援者”に徹した結果』

リーダーとしての初日。俺はあえて、自分の成功体験を封印した。若手たちの意見に耳を傾け、彼らの「壁」を一緒に取り除くことに徹した時、組織に劇的な変化が訪れる。かつての独裁者が、初めて手にした「本当のチームワーク」とは──。

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