vol.206『受注の瞬間——元社長、現場で初めて「自分の力」で一勝を掴み取る』

シリーズ①:Re:START NOTE|”止まりながら進む日々”

⏱ 読了目安:約3分

かつて動かした「1億円」よりも、今日手にした「1件」が、震えるほど重かった。

「お引き受けします。あなたの言葉が、一番響きましたから。」

スマートフォンの向こう側で、クライアントの社長がそう告げた瞬間、俺の視界は一気に滲んだ。かつて代表取締役という肩書きを背負い、部下が持ってきた数千万円の契約書に機械的に判を押していた頃には、絶対に味わえなかった感覚。それは、組織という鎧をすべて剥ぎ取られた俺が、たった一人の「人間」として認められた証だった。

どん底の更地で、俺はようやく自分の足で一本の杭を打ち込んだ。この「一勝」が、俺の魂を本当の意味で再起動させたんだ。

「受注」という二文字が、失っていた自信という名のピースを埋めてくれた。

こんな人に読んでほしい

  • 「自分には価値があるのか」と暗闇の中で迷っている人
  • 大きな目標ばかりを見て、足元の一歩を軽んじてしまっている人
  • 結果が出ない焦りの中で、自分を信じる理由を探している人

この記事で伝えたいこと

  • 数字の大きさよりも「プロセスへの自負」が心を救うという視点
  • 不器用な誠実さが、洗練されたテクニックを凌駕する瞬間
  • 自分を肯定できるのは、結局「自分自身の行動」でしかないこと

1. 運命の着信と、呼吸を忘れた数秒間

プレゼンから数日。デスクに置いたスマホが震えるたびに、心臓が跳ねた。いざ着信した時、俺はかつてのどんな重要なM&Aの交渉よりも緊張していた。 「〇〇さん、正式にお願いすることにしましたよ。」 その言葉を聞いた瞬間、会議室の隅にいた若手の田中と目が合った。田中は無言で、けれど俺以上に嬉しそうに頷いた。 かつての俺なら「当然の結果だ」と冷静を装っただろう。だが今は違う。喉の奥が熱くなり、ただ「ありがとうございます」と繰り返すのが精一杯だった。この1件は、俺にとっての「契約」ではなく、社会からの「生存許可証」のように感じられたんだ。

2. 比べないことが教えてくれた「最小単位の幸せ」

かつての豪華なオフィス、何十人もの部下、華やかなパーティー。それらと今の「営業代行の新人」という立場を比べることは、もうやめた。 昨日の自分より、今日、誰かの心を動かせたか。かつての栄光を追いかけるのではなく、目の前の顧客の課題を解決できたか。 その「最小単位」に集中し始めたとき、俺の中にあったどす黒い焦りは消えていた。1億円の取引も、今回の1件も、顧客が対価として払う「期待」の重さは変わらない。その本質にようやく気づけたのは、すべてを失って更地に立ったからこそだった。

3. それでも前に進む理由

受注した夜、俺は一人で缶ビールを開けた。高級シャンパンの味は忘れたけれど、この350mlの苦味は一生忘れないだろう。 俺が前に進み続ける理由は、もう「名誉」や「富」のためじゃない。 自分の力で価値を生み出し、誰かに必要とされる。そのシンプルで力強い実感を、一つずつ丁寧に積み上げていきたいからだ。 更地を耕し、種をまき、ようやく芽が出た。この小さな双葉を、次は大きな森に育てる。俺の挑戦は、ここから本当の意味での「拡大フェーズ」へ突入する。

まとめ

  • 自分を救うのは、過去の栄光ではなく「今日手にした小さな結果」
  • 「自分から買いたい」と言ってもらえる喜びこそが、商売の原点
  • 一つの一勝を全力で喜べる心が、次の大きな壁を越える力になる

次回予告

vol.207『「リーダー」への打診——元社長を襲う、”あの時”のトラウマとの決別』

現場で結果を出した俺に、会社から意外な提案がなされる。それは、少数のチームを率いるリーダーへの抜擢だった。だが、俺の脳裏をよぎったのは、かつて組織を崩壊させてしまった「あの景色」だった──。

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