⏱ 読了目安:約3分
順調な時ほど、足元には深い落とし穴が口を開けている。
「そのやり方、効率悪くないですか?俺ならもっとうまく回せますが。」
会議室の空気が凍りついた。発言したのは、他でもない俺だ。巨大プロジェクトの一員として成果を出し、周囲からの信頼も得始めていた矢先のこと。上司の提案に対する俺の言葉には、隠しきれない「元社長」としての傲慢さが滲み出ていた。
どん底から這い上がり、組織の歯車として生きる覚悟を決めたはずだった。だが、少しの成功が、封印したはずの「過去の亡霊」を呼び覚ましてしまったのだ。

こんな人に読んでほしい
- 仕事が順調で、周囲のアドバイスが耳に入らなくなっている人
- 過去の成功体験が忘れられず、今の環境に不満を感じている人
- 「自分はもっと評価されるべきだ」という思いが強くなっている人
この記事で伝えたいこと
- 「謙虚さ」を失った瞬間に、成長は止まるという事実
- 過去の栄光は、今の自分を輝かせるための道具ではない
- 真の自信とは、自分の未熟さを認められる強さのこと
1. 忍び寄る「万能感」という病
プロジェクトが軌道に乗り、俺の提案が採用される機会が増えてきた。周囲からの「さすがですね」という言葉が、心地よい麻薬のように俺の理性を狂わせていった。かつて数百人の社員を率いていた頃の感覚が蘇る。「俺の判断が正しい」「俺が一番わかっている」。そんな万能感が、日々の業務の中で態度や言葉の端々に現れ始めていた。
あの上司への不遜な発言は、決して突発的なものではない。積み重なった慢心が、ついに限界を超えて噴出した瞬間だったのだ。
2. 比べないことが教えてくれた「裸の王様」
会議の後、信頼する同僚に呼び出された。「〇〇さん、最近ちょっと…昔に戻ってませんか?」。その言葉に、頭を殴られたような衝撃を受けた。俺はまた、無意識のうちに「社長時代の自分」と「今の上司や同僚」を比べて見下していたのだ。
今の俺には、かつてのような権力も肩書きもない。ただの「一人の社員」だ。それなのに、態度だけが偉そうになっていた。鏡を見るまでもなく、自分が滑稽な「裸の王様」になっていることに気づかされた瞬間だった。
3. それでも前に進む理由
その日の夜、俺は一人、これまでの再出発の日々を振り返った。どん底で味わった屈辱、仲間に助けられた感謝、歯車として働く誇り。それらすべてを、一時の成功で台無しにするところだった。
翌朝、俺は上司のもとへ向かった。「昨日は大変失礼な発言をしました。申し訳ありません」。深く頭を下げた。上司は少し驚いた顔をしたが、「期待してるからこそ、厳しいことも言うんだよ」とだけ言ってくれた。この言葉の重みを、俺は一生忘れないだろう。慢心はいつでも俺を狙っている。だからこそ、俺は何度でも謙虚さという鎧を身に着け直す。それが、再出発した俺の生きる道だからだ。
まとめ
- 成功体験こそが、最大の「学びのブレーキ」になり得る
- 周囲の苦言は、自分を映す最も正確な鏡である
- 何度失敗しても、気づいたその瞬間からやり直せばいい
次回予告
vol.213『聖域なきリストラ——元社長が下す、最も残酷で、最も愛のある決断』
慢心を乗り越えた俺に、会社から非情な通告がなされる。それは、かつての部下たちを含む大規模な人員削減の実行役だった。再出発の地で、俺は再び「人の人生」を左右する決断を迫られる。情と理の間で揺れ動く、元社長の苦悩と覚悟とは──。
おまけ・SNS連携
更新情報はX(旧Twitter)でも発信中!
@Okin_san_
元社長のリアル再出発ストーリーをお届けします
